アドヴェントカレンダー10日目・本番前の過ごし方

 本番前は、実に忙しい。

どの様に過ごすか。そして、どの様にやりすごすか!


移動する人もいるでしょう。会場の音合わせもあるでしょう。慣れない場所で食事の時間や場所も不規則になるでしょう。

いつもと同じなのは、見慣れた譜面だけ。頼れるのはそれだけ、と言っても過言ではないのだけど、譜面と言ってもそれは単なる紙。。。いいえ、アイパッドの楽譜を使っている現代曲のカルテットのメンバーの人が、演奏会直前に最終チェックをパリのメトロの中でしていて、集中しすぎてしまったのか、メトロの扉にアイパッドががちゃん!と挟まれ、ヒビが入り、そのままコンサートで弾いていたら、後半に画面がうっすら暗くなり、最後のページは真っ黒になったという、もはや怪談もあります(その人は記憶力が素晴らしく、最後思い出しながら弾いたらしい。書かれたばかりの現代曲を。なんてこと!)。


何が言いたいかというと、頼れるのは譜面かというと、そうではありません。


頼れるのは、あなたの頭の中にある、作品そのもの、その音楽の「音」なのです。

その「音」を頭と心に入れるために、こんなに苦労して練習してきたのです。だからそれはちゃんともう自分の中に入っているのです。あとは、それを激しい集中力であたためて、皆様の前に出す。レストランのオーブンみたいなものです。コンサートのちょうどその時刻に、熱い気持ちを生み出さなければなりません。


練習で弾くたびにもちろん熱くなっていたとはいえ、本番はさらに熱量が上がります。それをあと1時間でやるんだな、あと30分で、あと15分で、というように、体の中で集中力を高めて行きます。ただ、この集中は何回も出したり入れたりできるような便利なものではないので、とにかく開始時間へ向けて、集中していく、後戻りできない長い道を1日真っ直ぐ行く感じです。でも、そのことしか考えられなくなってしまうのも逆に良くない。


初めに「どのようにやり過ごすか」と書いたのは、長い一本道を行きながら最後に集中する予定なのだけど、途中でコンサートのことを一瞬忘れると良いからです。


例えば、日本では、私はコンビニに入るとコンサート当日ということを5分ぐらいの間忘れられます。何だかあそこは独特の空間です。どのコンビニも違うのに、どのコンビニもコンビニ特有の、時間が止まったような空間。


ベルギーの自分の教会でランディドルグを弾く時には、同じ教会の建物の後ろ半分で、朝からボランティアの人たちが集まって「炊き出し」的なものをしています。ホームレスの人たちにサンドイッチとスープを出すランチタイムを週5日間やっています。私がそちらの方を通ってピアノのある部屋に行くと、食べに来ている人たちともすれ違うし、全くの別世界です。

私はそこを通ると時間の感覚が薄れて、たったの10分15分のことなのですが、午前中一人でオルガンで練習したのが遠い昨日のことのように感じられます。


ご飯を食べたりお茶したりというのは私の場合あまり効果がなくて、食べながらコンサートのことを考えてしまうので、近所の本屋など全く違う空気感の場所に行く時もあります。

本番前に、一瞬、本番のことを忘れる、これは効きます。頭の中がスッキリして、少しして「あっコンサートもうすぐ始まるんだ」と、素直に嬉しくなります。


というわけで、明日はコンサートなのでここでおしまいにしますが「煩雑なことは一旦置いておいて自分の身ひとつ感を味わい、そのあと一気に集中力を高める」、これが良い本番前の過ごし方ではないか、と思うのでした!


追記💓

皆さんはどんな本番前の秘訣があるでしょうか?演奏でなくても人の前で発表するとか、試験の前とかそういうとき。もしよかったら教えて欲しいです。


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