アドヴェントカレンダー22日目・怖いとは
怖いと思うこと、1日に一度ぐらいありますか?
演奏中にページを2枚いっぺんにめくってしまったとき。
雨の石畳がちょっと滑りそうだったとき。
怖いと言っても、ひやっとして、まあ終わりです。
私は急に誰かに大きい声で何かを言われた時怖いです。
怖いので、大きい声で「文句言われ」「キレられ」「怒鳴られ」ないように、心して生きている自覚があります。
その時、私はただ急足で歩いていました。誰の邪魔にもならず、風雨の激しい中、傘を前のめりにさし、一人で普通に歩いていたのです。雨を避け、屋根ありの通路へ真っ直ぐ入って行こうとしたときです。通路の入り口右の奥にホームレスの人が座っているのが見えて、きっと「小銭を恵んでください」と言うだろうなと思ったけれど、小銭は持っていません。
ところが、そのおじいさんは物乞いの声音とは真逆の、ドスのきいた大声で、
「なんとかかんとか!!!」
とまくしたてたのです。何語だ?なんて言ったの?私はビクッと震え上がり、
「お金持ってなくて!」
ととっさに答え、おじいさんの横をすり抜け、ギャラリーと呼ばれるその通路に駆け込みました。
久しぶりに大声でどつかれたので、そのギャラリーの奥にある円形の階段広場を登っているときもまだドキドキしていていて、上の方をあまり見ずに三階まで一気に登り切ってしまいました。着いた時息がちょっと切れるぐらいに。
そこは高台になっている道へ通り抜け、コンサートホールに中央駅から近道できるようになっています。その上、営業時間内ならギャラリーの左右にお店もあったり、何より屋根がついているので雨の日にはそこを通るのが私の習慣でした。
もうすぐ夜8時開演のコンサートに向かっていたので、店は閉まり、あたりも暗くなっていたのですが、様子がおかしい。なんと、上がり切ったところの、コンサートホールの入り口が目の前という場所に、道路工事みたいな太いテープが張り巡らせてあり、外へ出られなくなっていました。よく見たらその奥の道に面した場所も(こんなところにドアがあったんだ!とびっくり)ガラス張りのドアが閉まっていて、ロックがかかっているようです。
薄暗い階段を怖い思いのまま三階まで登って行ったのに、引き返して、階段全部降りて、建物から出て中央駅の入り口まで戻り、ざんざん降りの中、弧を描いて急な感じで上がっていく外の道を歩くしかありません。
そこで急に汗が出る感じがして、そうだ、またあの大きい声の人のそばを通らなきゃいけないし!と思いました。でもそこはもう袋小路なのですから戻るしかない。他には誰も人はいない。このとき私は怖かったです。真っ暗な教会に慣れているから普段なら怖くなかったでしょうけれど、怒鳴られるのは私はいやです。それも2度目なんて嫌すぎるじゃないですか。
寒かったので着込んだコートの中で汗ばみながら、私は入り口へ到着しました。
物乞いの人は、よく通るフランス語で
「さっき言ったでしょ!上閉まってるから行かない方がいいよって!」
と言うと、優しそうに笑いました。
私って馬鹿なの?
と思うのはこんな瞬間です。
追記💔
相手のことがわからないほど怖いことはない。
状況がわからないとき、無駄に何倍も怖い。
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